本文へスキップ

Official Guide

オフィシャルガイドの会

見出しHEADLINE


八王子城に関して、残された古文書・縄張り図などが圧倒的に少なく、わずかにさぐり得たものとてもその真偽(しんぎ)のほどは必ずしもさだかではありません。
しかしながら400余年たっても残されている遺構は厳然としてあり、それらを解き起こすことにより、ありし日の八王子城の姿を解明する手がかりになるものと確信しています。
山城の山塊に残されたわずかな爪跡かもしれませんが、それらが多くのことをもの語ってくれます。

第一部では「バルーン上げ」という手法を導入することにより八王子城を視覚的・立体的に捉えるこころみを行ないました。
手法としてはシンプルですが、いい大人たちが邪念なく挑戦した企画のドキュメントです。

また第ニ部では、太鼓曲輪尾根に存在する5つの堀切のスケールを描出することをこころみました。各堀切の大きさを体感できると思います。

以下にその経過と結果を記載しました。

 Official Guide Working Group 2014-2015


【第一部】 堀切の位置の特定

■ きっかけは太鼓曲輪尾根を望むこの景色から

八王子城跡の Official Guide にはなじみの景色ですが、太鼓曲輪尾根に厳然と存在する5つの堀切、さて、この光景の中でそれらがどこにあたるのだろうか。
そもそも、御主殿曲輪だってどこかあるのか確信を持って答えられない!!
ならば調査してみようじゃないか、というのがこの検証実験を企画したきっかけです。



関連する詳細は次をクリック 雲湧き昇る八王子城


■ バルーン上げという手法

直径60cm前後のイベント用のバルーンを使用。
それにヘリウムガスを満帆に充填し、50mのタコ糸をリード線として取り付け、調査したい場所から天空に上げます(上げ手)。
それを撮り手が観察スポットから写真や動画に撮り記録するというものです。



こんな感じでやったという雰囲気を3分間の動画にまとめました バルーン上げ手法


■ 実証実験の記録

まず予備試験を 2014/12/13 に行ない、この方法で実証実験を行なう価値があるのかを評価しました。
天空に上ったバルーンを見事確認することができ、この手法で次のステップに進めることにしました。



当初は Official Guide Group の一大イベントとして行ない、全ての曲輪群から上がったバルーンを見るだけの方も歓迎のような感じで企画し、その期日を 2015/01/15 に設定しました。
しかしその目論見は無残にも打ち壊されました。関東南岸を通過する移動性低気圧のためです。
バルーン法という性格上どうしても天気に左右され、とくに風速が問題です。
そこでグループ全体のイベントしての実施をあきらめ、天気の推移を見極めながら臨機応変に集まれるメンバーが主体となってやるゲリラ的方針にかえました。

【実行記録】

2014/12/13 太鼓曲輪尾根堀切群バルーン 予備調査(第三堀切のみ対象)
  記載名順は(上げ手:第一〜五堀切までの順/撮り手)
  金子、畠山、假屋 / 野原、伊藤、柴田
2015/01/13_太鼓曲輪堀切調査 全ての堀切対象(実際は2つの堀切で位置間違いあり)
  金子、小牧、畠山、水島、假屋 / 永塚、伊藤、柴田
2015/01/16_御主殿曲輪から四段石垣・山王台を調査
  畠山、金子 / 野原、永塚、柴田
2015/01/20_太鼓曲輪第二堀切調査および山王台・柵門台
  明石、増島、金子、假屋、小牧 / 畠山、伊藤、柴田
2015/02/02_御主殿から第二・三堀切やり直し
  明石、假屋、金子、増島 / 須永、畠山、伊藤、柴田
2015/02/07_金子丸から御主殿曲輪
  畠山 / 柴田


■ 太鼓曲輪尾根の堀切群の位置検証

【結論-1】御主殿曲輪から第二、第三堀切

下に示したように御主殿曲輪から見た第二堀切、第三堀切の位置を確認することができました。
なお、御主殿曲輪から第一堀切、第四、第五堀切を見ることは角度的にできませんでした。




【結論-2】金子曲輪の下から太鼓曲輪尾根の堀切群

第一堀切は予想もしない方向に出現ました。思っていたよりずっと左手です。
それで、第一堀切から一挙に第四、第五堀切までをカメラに収めるのは角度的に無理という結果になりした。



当初行なった全ての堀切を対象にした調査(2015/01/13)の写真を解析した結果、実際は2つの堀切で位置間違いがあったことに気づかされました。
その後も数次の調査をくり返すことにより最終的に第二〜第五堀切の位置を確定することができました。



以上の調査結果を3分間の動画にまとめました 堀切群の位置確定


■ さらに、山王台、柵門台は?

御主殿地区と山頂の要害部の中段に位置し双頭の攻撃堡である山王台、柵門台(柵門跡)はどこにあたるのでしょうか。
はじめはそれらを御主殿地区からねらったのですがなかなかいい位置にとらえることができませんでした。
後日、場所を変え曳橋東端から望むことができました。


  (曳橋東端より)


■ 四段石垣群はどこでしょうか

これは御主殿広場の最奥部、いわゆる殿の道の登り口の奥の方に上がりました。
まあ、予想どおりという感じですね。




■ 発端であった御主殿曲輪はどこでしょうか

そもそもの発端は金子曲輪の下あたりから見える太鼓曲輪尾根の堀切群はどこにあるのだろうか、そして御主殿曲輪は?、というものでした。
八王子城山本体と太鼓曲輪尾根の谷筋を流れる城山川、その側面に造った広大な人工の段丘、まさにそこが御主殿曲輪ということになります。



八王子城の全般調査を3分間の動画にまとめました 八王子城の重点位置確定


■ 成果物としてシートを作成

今回の調査結果の成果物のひとつとしてシートを作成しました。
御主殿曲輪からから見える太鼓曲輪尾根の堀切群、第二と第三堀切、および、金子曲輪下から見える第一から第五堀切までをコンパクトに表示することを目的としたものです。


   _シート@(PDF)

   _シートA(PDF)



【第二部】 堀切のスケールの描出

■ 堀切をスケール化するための起点

太鼓曲輪尾根に存在する5つの堀切のスケールを描出するために現地にて実踏撮影会を持ちました。
堀切のスケール感を描き出すために便宜的に林野庁(営林署)の標石(表示杭)の位置を念頭において解析しました。
すなわち、標石はおおむね各堀切の両岸の肩の上のトップに打ち込まれています。また、堀切の底部にもあります。
そこで標石の設置点を起点として、堀切のフレームを「V字型」あるいは「U字型」さらには「J字型」としてイメージすることにしました。
ただし一部、底部で土砂に覆われ標石が見つからないところ(第一、第五)、またトップの肩部では登りきった場所より少し離れているところにある(第一の東岸、第四の東岸)例外ケースもあります。



■ 記録手法

スケールの推定は写真判定を用いることとしました。
原理はアオリ機能を使った撮影を模したもので、撮影対象(堀切)とカメラの液晶面が平行になるように撮影しました。
これにより上方にある対象物でも歪度を最小限に抑えられると考えたからです。


■ 実行記録

2015/2/24 事前打ち合わせ会
実行事務局よる事前打ち合わせ会を持ちました。
実効日時、方法、役割分担などを決めました。
参加者4名(NKH、KRY、ITH、SBT)。

2015/3/15 実行日
ロケハンを編成し太鼓曲輪尾根にて撮影を行いました。
参加者8名(KMY、KNK、NKH、KRY、HTK、ARS、ITH、SBT)。



2015/3/31 結果評価-1
集約された画像データをもとに1回目の検討会を持ちました。
参加者5名(KMK、NKH、KRY、ITH、SBT)。

2015/4/13 結果評価-2
さらに追加された画像データも合わせ2回目の検討会を持ちました。
参加者7名(SNG、KMY、KNK、NKH、HTK、ITH、SBT)。

まとまった結果を次項以下に記載します。

スケールの推測(まとめ)

■ 第一堀切

太鼓曲輪尾根に展開する堀切群の中では他の4つより比較的離れた場所に存在しています。
削り取られた土の跡がくっきりと「U字型」に残っています。
スケールを以下のように推定しました。



堀切のスケールを体感して下さい 第一堀切の動画

■ 第二堀切

第四と並んで小ぶりな堀切です。形状は「J字型」をしています。
大手道にある太鼓曲輪尾根への取りつき口から登り、一番手近なところにある堀切です。
尾根を構成している岩を刳り貫いた(くりぬいた)堀切であることがよく分かります。
スケールを以下のように推定しました。



堀切のスケールを体感して下さい 第二堀切の動画

■ 第三堀切

5つの堀切の中で最も大きなものです。形状は「J字型」をしています。
御主殿の虎口や御主殿曲輪の土塁と対峙した位置にあります。
抉り(えぐり)取られた空間は巨大で、刳り(くり)出た石は直下の御主殿周辺の石垣などの構築に使われたものと思われます。
スケールを以下のように推定しました。



堀切のスケールを体感して下さい 第三堀切の動画

■ 第四堀切

第二と並んで小ぶりな堀切です。形状はやや口を開いた「V字型」です。
ここと第五は地形的に影になり御主殿地区から見通すことはできません。
(第一も反対方向に離れていて見えない)
スケールを以下のように推定しました。



堀切のスケールを体感して下さい 第四堀切の動画

■ 第五堀切

第三に次ぐ大きさがあります。鋭く抉り(えぐり)取られた「V字型」の堀切です。
北高尾山稜から富士見台を経由して侵攻してくる軍勢を、詰の城の背後にある大堀切と並んで防御する、双頭の防御機構であったといえます。
スケールを以下のように推定しました。



堀切のスケールを体感して下さい 第五堀切の動画


■ 堀切のスケールの計測結果

「Official Guide Working Group 2014-2015」の活動の締めくくりとして、2015/4/13に結果評価のための判定委員会を持ちました。
メンバーは、須永、亀山、金子、中濱、畠山、伊藤、柴田、の7名。
イメージ計測法のまとめとして以下の結果をまとめました。

   東端の高さ  西端の高さ  間口(幅)  タイプ
 第一堀切   6m   6m  13m U字型
 第二堀切   3m  11m   15m  J字型
 第三堀切   6m  15m   24m  J字型 
 第四堀切   4m  4m   13m  V字型 
 第五堀切   9m  6m   15m  V字型


■ 堀切計測の成果物としてシートを作成

今回の太鼓曲輪の規模調査の成果物としてシートを作成しました。
太鼓曲輪尾根に連なる5つの曲輪のそれぞれのスケールを実感してもらうことを目的としたものです。


   _シートB(PDF)

■ 謝辞

前年12月の太鼓曲輪尾根のバルーン上げ手法による堀切の位置の特定から始まった一連の調査活動も、後半の各堀切の形状のイメージ化を敢行することでひとまず完了しました。
この間、しんぼう強く行動してくれました多くのガイドメンバーのご協力には本当に感謝しております。
また、撮影隊の伊藤氏は Official Guide ではありませんが協力メンバーとして参加していただきました。
堀切の実地撮影で協力していただいた戦国歴女のArashiさんも、尋常じゃない険しい山稜を踏破していただき本当にありがとうございました。
そのほかにも多くの方々のご指導・ご協力をいただきました。この場をかりて御礼申しあげます。

 【Official Guide Working Group 2014-2015】

企画推進: 八王子城跡ガイドHP編集事務局  風魔Project  2015年4月27日 記